Web版マグナ・カルタ

A Magna Carta for the web

TED Tim Berners-Lee 2014年03月より。

ハイライト:

  • 皆さんにはウェブの表と裏、両面から考えてほしいのです。

  • 監視が有り得るでしょうし、それがデータを悪用する人間によって行われる可能性があるということは事実です。

  • ウェブの権利章典であるマグナ・カルタ

  • 基本的な権利であり、私が望む相手とコミュニケーションをとるための正しい方法であると決めてはどうでしょうか。

A Magna Carta for the web

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00:00 《TED Logo》 《TEDロゴ》
00:04 TED is 30. TEDが始まって30年です。
00:06 The World Wide Web is celebrating this month its 25th anniversary. ワールドワイドウェブは今月、25周年を迎えます。
00:10 So I've got a question for you. そこで皆さんに問いかけたいと思います。
00:13 Let's talk about the journey, mainly about the future. Let's talk about the state. これまでの道のりと未来のこと、そして現状の話をしましょう。
00:19 Let's talk about what sort of a web we want. どのようなウェブにしたいのかを話しましょう。
00:22 So 25 years ago then I was working at CERN. 25年前、私はCERNで働いていました。
00:25 I got permission in the end, after about a year to basically do it as a side project. 約1年後に許可を得て、基本的にはサイドプロジェクトとしてウェブ作りを行うことになりました。
00:30 I wrote the code. 私がコードを書きました。
00:32 I was at first I suppose the first user; 最初のユーザーは私だったと思います。
00:34 there was a lot of concern that people didn't want to pick it up because it would be too complicated; あまりに複雑すぎて、誰も使いたがらないかも知れないという懸念がありましたが、
00:40 a lot of persuasion, a lot of wonderful collaboration with other people. 多くの人を説得したり、素晴らしい共同作業が行われたりしました。
00:43 And bit by bit it worked. そして、少しずつうまく行き、
00:46 It took off. It was pretty cool. 軌道に乗りました。とてもクールでしたよ。
00:48 And in fact, a few years later in 2000, 5% of the world population were using the World Wide Web. 実際、数年後の2000年には、世界人口の5%がWWWを利用していました。
00:57 2007 years later, 17%. それが2007年には17%になり、
01:00 For 2008, we formed the World Wide Web Foundation, partly to look at that and worry about that figure. 2008年、私たちはWorld Wide Web財団を設立しました。というのは、この数字を見て心配になったからです。
01:07 And now here we are, 2014 and 40% of the world are using the World Wide Web, obviously and counting. そして2014年の今、世界の40%がワールドワイドウェブを利用しています。
01:16 Obviously it's increasing. 明らかに増加しています。
01:17 I want you to think about both sides of that. 皆さんには表と裏の両面から考えてほしいのです。
01:21 Okay, obviously, to anybody here at Ted, the first question you ask is, what can we do to get the other 60% on board as quickly as possible? さて、ここTEDにいる誰もが真っ先に問うのは、どうしたら残り60%をできるだけ早くウエブに引き入れられるか、ということでしょう。
01:30 Lots of important things. Obviously, it's going to be around mobile. 大切なことはたくさんあります。明らかにモバイルが中心になるでしょう。
01:32 But also, I want you to think about the 40%; しかし、それだけではなく、既に使っている40%についても考えてほしいのです。
01:34 because if you're sitting there yourself sort of with a web-enabled life, you don't remember things anymore. You just look them up. というのも、もしあなたが座ったままウェブを駆使した生活をしているなら、あなたはもう物事を覚えないし、調べるだけになります。
01:42 Then you may feel that it's been a success and we can all sit back. そうして、成功したと思い安心していられるかもしれません。
01:48 But in fact, it's been a success. 実際に成功しています。
01:50 There's lots of things that Khan Academy for crying out loud, there's Wikipedia. 言わずと知れたカーン・アカデミーもあれば、ウィキペディアもあります。
01:55 There's a huge number of free ebooks that you can read online, lots of wonderful things for education, things in many areas. オンラインで読める無料の電子書籍は膨大な数にのぼり、教育用の素晴らしいものや様々な分野のものがたくさんあります。
02:01 Online commerce has in some cases completely turned upside down the way commerce works altogether. オンライン商取引は、場合によっては商取引の仕組みを完全にひっくり返してしまいました。
02:07 Made types of commerce available, which weren't available at all before; 以前は全く利用できなかった種類の商取引が可能になり、
02:10 on a commerce or almost universally affected government not universally affected, but very affected. ほとんど全ての人が影響を受け、政府は全てではありませんが、非常に影響を受けています。
02:17 And on a good day, lots of open data, lots of egovernment. 現在は、数多のオープンデータと多くの電子政府が利用されています。
02:21 So lots of things which are visible happening on the web. このように、ウェブ上では目に見える形でさまざまなことが起こっています。
02:25 Also lots of things which are less visible. また、目に見えないものもたくさんあります。
02:28 The health care late at night when they're worried about what sort of cancer, somebody they care about might have; 真夜中のヘルスケア。自分の大切な人がどんな癌にかかっているか夜遅くまで心配な時、
02:34 when they just talk across the Internet to somebody who they care about very much in another country. 他国の、同様に心配してくれる人とインターネットで話ができます。
02:43 Those sorts of things they're not out there. このようなことはネットの外ではできません。
02:48 And in fact, they require a certain amount of privacy. 実際には、ある程度のプライバシーが要求されます。
02:51 So we kind of assume that part of the web. ですから、私たちはウェブの一部を想定しています。
02:54 Part of the deal with the Web is when I use the web, it's just a transparent, neutral medium. その一部とは、私がウェブを使うとき、それが透明で中立的なメディアであるということです。
02:59 And I can talk to you over it without worrying about what we, in fact, now know is happening; 現実に起こっていることを心配することなく、ウェブ上であなたと話ができます。
03:05 without worrying about the fact that not only will surveillance be happening, but it will be done by people who may abuse the data. しかし実際には、監視が有り得るでしょうし、それがデータを悪用する人間によって行われる可能性があるということは事実です。
03:12 So in fact, suddenly we realized we can't just use the web. 実際、私たちは突然、ウェブを利用するだけではダメだと気付きました。
03:15 We have to worry about the underlying infrastructure of the whole thing. 全体の基盤となるインフラを心配しなければなりません。
03:20 Is it in fact of a quality that we need? それが本当に必要な品質なのか。
03:24 We revel in the fact that it's got a wonderful we have this wonderful free speech. 私たちは、ウェブには素晴らしい言論の自由があるという事実に喜びを感じています。
03:29 We can talk to any, we can tweet, and lots and lots of people can see our tweets; 誰とでも話すことができ、ツイートすることができ、たくさんの人が私たちのツイートを見ることができます。
03:33 except when they can't, except when actually Twitter is blocked from their country; ただし、現実的にTwitterがその国でブロックされている場合や、
03:39 or in some way the way we have tried to express ourselves has put some information about that the state of ourselves, the state of the country we live in; 自分を表そうとしたのが、何らかの形で、自身の状態や住んでいる国の状態について発信された場合
03:46 which isn't available to anybody else. 他者には知られてはいけない情報が発信された場合は別ですが。
03:49 So we must protest and make sure that censorship is cut down. ですから、私たちは抗議し、検閲が削減されるようにしなければなりません。
03:54 The web is opened up where there is censorship. 検閲があるところで、ウェブが利用できるようにしなければ。
03:58 We love the fact that the web is open. 私たちは、ウェブがオープンであることを愛しています。
04:01 It allows us to talk. Anybody can talk to anybody. 話ができます。誰でも皆と話すことができるのです。
04:03 It doesn't matter who we are. 私たちが誰であるかは問題ではありません。
04:05 And then we join these big social networking companies; そして、大手SNS企業に参加しています。
04:09 which are, in fact effectively built as silos so that it's much easier to talk to somebody in the same social network; 実際には、SNSはまるでサイロのように構築されているので、同じSNSの誰かに話しかけるのは、
04:16 than it is to talk to somebody a different one. 他のSNSの誰かに話しかけるよりもずっと簡単です。
04:18 So in fact, we're sometimes limiting ourselves. つまり、私たちは自分自身を制限しているということです。
04:22 And we also have if you've read the book about the filter bubble; 「フィルター・バブル」について読んだことがあるでしょうか。
04:25 the filter bubble phenomenon is that we love to use machines which help us find stuff we like. フィルター・バブル現象とは「自分が好きなものを見つけてくれる機械を使うのを好む」ということです。
04:31 So we love it when they learn what things we like to click on. つまり、何を好んでクリックしているかを機械が学習してくれると、私たちは嬉しいのです。
04:35 And so the machine automatically feeds us the stuff that we like, we end up with this rose colored spectacles view of the world called a filter bubble. そうすると、機械が自動的に好きなものを提供してくれるので、私たちはフィルター・バブルと呼ばれるバラ色のメガネで世界を見ることになります。
04:45 So here are some of the things which may threaten the filter where we have. では、私たちが持っているフィルターを揺さぶる可能性のあるものをいくつか紹介しましょう。
04:50 What sort of web do you want? あなたはどのようなウェブを望みますか?
04:52 I want one which is not fragmented into lots of pieces; 私は、たくさんのピースに断片化されていないものがいいと思います。
04:56 some countries have been suggesting they should do in reaction to the recent surveillance. 最近の監視に対して、断片化すべきだと提案している国もあります。
05:01 I want a web which has got, for example, is a really good basis for democracy. 例をあげれば、私は、民主主義のための優れた基盤を備えたウェブを望みます。
05:08 I want a web where I can use health care with privacy, and where there's a lot of health data. また、プライバシーを守りながら医療を受けることができ、多くの健康データが存在するようなウェブを望んでいます。
05:15 Clinical data is available to scientists to do research. 臨床データは科学者が研究のために利用できます。
05:18 I want a web where the other 60% get on board as fast as possible. 他の60%の人たちができるだけ早く参加できるようなウェブにしたいです。
05:24 I want web which is such a powerful basis for innovation; イノベーションのための強力な基盤となるようなウェブを目指しています。
05:29 that when something nasty happens, some disaster strikes, then we can respond by building stuff to respond to it very quickly. 何か厄介なことが起きたり、災害に見舞われたりしたときに、すぐに対応できるようなウェブ作りです。
05:36 So this is just some of the things that I want from a big list. 私の長いリストからいくつか選びました。
05:41 Obviously, it's longer you have your list. もちろん、あなたにもご自分のリストがあることでしょう。
05:43 I want us to use this 25th anniversary to think about what sort of a web we want. この25周年を機に、どのようなウェブにしたいのかを考えてみてほしいと思います。
05:49 You can go to Webat25.org and find some links. Webat25.orgに行けば、いくつかのリンクがあります。
05:51 There are lots of sites where people have started to put together a Magna Carta, a bill of rights for the web. 多くのサイトで、人々がウェブの権利章典であるマグナ・カルタをまとめ始めています。
05:57 How about we do that? 私たちがそれをするのはどうでしょうか?
05:58 How about we decide, these are, in a way, becoming fundamental rights, the right way to communicate with whom I want. これはある意味、基本的な権利であり、私が望む相手とコミュニケーションをとるための正しい方法であると決めてはどうでしょうか。
06:06 What would be on your list for that Magna Carta? あなたのマグナ・カルタのリストには何が入っていますか?
06:08 Let's crowdsource a Magna Carta for the Web. ウェブのためのマグナ・カルタをクラウドソーシングしましょう。
06:14 Let's do that this year. 今年はそれをやりましょう。
06:16 Let's use the energy from the 25th anniversary to crowdsource a Magna Carta to the web. 25周年のエネルギーを利用して、ウェブのためのマグナ・カルタをクラウドソースしようではありませんか。
06:23 Thank you. And do me a favor. ありがとうございます。そして、お願いがあります。
06:26 Will you fight for it for me? 私のために戦ってくれませんか?
06:29 Okay? Thanks. オーケー? ありがとう。

和訳全文

TEDが始まって30年です。ワールドワイドウェブは今月、25周年を迎えます。

そこで皆さんに問いかけたいと思います。

これまでの道のりと未来のこと、そして現状の話をしましょう。どのようなウェブにしたいのかを話しましょう。

25年前、私はCERNで働いていました。約1年後に許可を得て、基本的にはサイドプロジェクトとしてウェブ作りを行うことになりました。私がコードを書きました。最初のユーザーは私だったと思います。

あまりに複雑すぎて、誰も使いたがらないかも知れないという懸念がありましたが、多くの人を説得したり、素晴らしい共同作業が行われたりしました。

そして、少しずつうまく行き、軌道に乗りました。とてもクールでしたよ。

実際、数年後の2000年には、世界人口の5%がWWWを利用していました。

それが2007年には17%になり、2008年、私たちはWorld Wide Web財団を設立しました。というのは、この数字を見て心配になったからです。

そして2014年の今、世界の40%がワールドワイドウェブを利用しています。明らかに増加しています。

皆さんには表と裏の両面から考えてほしいのです。

さて、ここTEDにいる誰もが真っ先に問うのは、どうしたら残り60%をできるだけ早くウエブに引き入れられるか、ということでしょう。大切なことはたくさんあります。明らかにモバイルが中心になるでしょう。

しかし、それだけではなく、既に使っている40%についても考えてほしいのです。というのも、もしあなたが座ったままウェブを駆使した生活をしているなら、あなたはもう物事を覚えないし、調べるだけになります。そうして、成功したと思い安心していられるかもしれません。

実際に成功しています。言わずと知れたカーン・アカデミーもあれば、ウィキペディアもあります。オンラインで読める無料の電子書籍は膨大な数にのぼり、教育用の素晴らしいものや様々な分野のものがたくさんあります。

オンライン商取引は、場合によっては商取引の仕組みを完全にひっくり返してしまいました。以前は全く利用できなかった種類の商取引が可能になり、ほとんど全ての人が影響を受け、政府は全てではありませんが、非常に影響を受けています。現在は、数多のオープンデータと多くの電子政府が利用されています。

このように、ウェブ上では目に見える形でさまざまなことが起こっています。

また、目に見えないものもたくさんあります。

真夜中のヘルスケア。自分の大切な人がどんな癌にかかっているか夜遅くまで心配な時、他国の、同様に心配してくれる人とインターネットで話ができます。

このようなことはネットの外ではできません。

実際には、ある程度のプライバシーが要求されます。ですから、私たちはウェブの一部を想定しています。

その一部とは、私がウェブを使うとき、それが透明で中立的なメディアであるということです。

現実に起こっていることを心配することなく、ウェブ上であなたと話ができます。

しかし実際には、監視が有り得るでしょうし、それがデータを悪用する人間によって行われる可能性があるということは事実です。

実際、私たちは突然、ウェブを利用するだけではダメだと気付きました。全体の基盤となるインフラを心配しなければなりません。それが本当に必要な品質なのか。

私たちは、ウェブには素晴らしい言論の自由があるという事実に喜びを感じています。誰とでも話すことができ、ツイートすることができ、たくさんの人が私たちのツイートを見ることができます。

ただし、現実的にTwitterがその国でブロックされている場合や、自分を表そうとしたのが、何らかの形で、自身の状態や住んでいる国の状態について発信された場合。他者には知られてはいけない情報が発信された場合は別ですが。

ですから、私たちは抗議し、検閲が削減されるようにしなければなりません。検閲があるところで、ウェブが利用できるようにしなければ。

私たちは、ウェブがオープンであることを愛しています。話ができます。誰でも皆と話すことができるのです。私たちが誰であるかは問題ではありません。

そして、大手SNS企業に参加しています。

実際には、SNSはまるでサイロのように構築されているので、同じSNSの誰かに話しかけるのは、他のSNSの誰かに話しかけるよりもずっと簡単です。

つまり、私たちは自分自身を制限しているということです。

「フィルター・バブル」について読んだことがあるでしょうか。フィルター・バブル現象とは「自分が好きなものを見つけてくれる機械を使うのを好む」ということです。つまり、何を好んでクリックしているかを機械が学習してくれると、私たちは嬉しいのです。

そうすると、機械が自動的に好きなものを提供してくれるので、私たちはフィルター・バブルと呼ばれるバラ色のメガネで世界を見ることになります。

では、私たちが持っているフィルターを揺さぶる可能性のあるものをいくつか紹介しましょう。

あなたはどのようなウェブを望みますか?

私は、たくさんのピースに断片化されていないものがいいと思います。

最近の監視に対して、断片化すべきだと提案している国もあります。

例をあげれば、私は、民主主義のための優れた基盤を備えたウェブを望みます。また、プライバシーを守りながら医療を受けることができ、多くの健康データが存在するようなウェブを望んでいます。臨床データは科学者が研究のために利用できます。

他の60%の人たちができるだけ早く参加できるようなウェブにしたいです。

イノベーションのための強力な基盤となるようなウェブを目指しています。何か厄介なことが起きたり、災害に見舞われたりしたときに、すぐに対応できるようなウェブ作りです。

私の長いリストからいくつか選びました。もちろん、あなたにもご自分のリストがあることでしょう。

この25周年を機に、どのようなウェブにしたいのかを考えてみてほしいと思います。

Webat25.orgに行けば、いくつかのリンクがあります。

多くのサイトで、人々がウェブの権利章典であるマグナ・カルタをまとめ始めています。

私たちがそれをするのはどうでしょうか?

これはある意味、基本的な権利であり、私が望む相手とコミュニケーションをとるための正しい方法であると決めてはどうでしょうか。

あなたのマグナ・カルタのリストには何が入っていますか?

ウェブのためのマグナ・カルタをクラウドソーシングしましょう。

今年はそれをやりましょう。25周年のエネルギーを利用して、ウェブのためのマグナ・カルタをクラウドソースしようではありませんか。

ありがとうございます。そして、お願いがあります。私のために戦ってくれませんか? オーケー? ありがとう。


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