『共産党を吾等が排撃する五つの理由』

二、国体の変革と共産党の独裁的専制を夢見る非国民

共産党を吾等が排撃する五つの理由』の第ニ章、全文(1897字)と要約(189字以下)


国体の変革と共産党の独裁的専制を夢見る非国民

労農ロシアの憲法第三条及び第五条に明記されて居り、また去る大正十五年十二月山形県五色温泉の日本共産党創立大会で決定した綱領にも明示されて居る所の条項に、次の如き意味の文字がある。
君主国体、民主国体を問わず、労農ロシア以外の現存の国家は、悉くブルジョワ階級支配のそれであるが故に、これ等の国家の根本組織(政治的、経済的、社会的組織)を変革して、無産階級支配の組織にせねばならぬ。 という文字がある。これが、共産主義者の根本主張である。

共産主義者は、無産階級支配の政治組織を作ることを理想とし、常に「労働者農民の政府を作れ」と唱えて居る。けれどもこの労働者農民の政府なるものは、労働者農民が全部これに参加して支配して居る政府であるかというに、事実に於て決してそうではない。「無産階級独裁の政府」というも、決して無産階級全部が参加して独裁するのではない。

労農ロシアの実情を見れば、共産党なる国民の一部から成る政党の独裁する政府である。更に事実に即して見れば、共産党少数幹部、否、実力を有する一人の頭領の独裁する政府である。即ち労働者農民の政府というは、表面に掲げた看板にすぎず、事実内面は、この看板とは著しく異ったものである。

革命当初に於ては、レーニンがロマノフ皇帝に代って支配者となり、レーニン死後は、スターリンが支配者となったのである。若しこれ等の支配者に反対するものがあれば、反革命とか反幹部とかの罪名によって処罰されるのである。トロツキーは反幹部の罪名によって国外に逐放され、カーメネフ、ジノヴィエフ、レーニン夫人等の革職、最近ではブハーリン、ルイコフ等の免職が、この事実を明白に物語るものである。

共産主義は、それが実行され得べき可能性に富むロシアに於てさえ、これが実行出来ないと云う実証を、ロシア自身革命十年の実験によって提供したのである。されば世界の何れの地方に於ても、この共産主義は到底実行することは出来ないのだと断ぜねばならぬのである。それに拘らず、何故共産主義は、労働者なり無産階級なりの救世主でもあるかの如く、騒ぎ立て囃し立て、鳴物入りの宣伝を行い各方面に種々の騒擾を起し、運動を起し、策動陰謀を試みつつあるのであるか。これは、共産党なるものが自己の手に政権を奪取せんとする方便にすぎないのである。

この共産主義を実行さえすれば、立ちどころに誠に結構此上ない社会が出来、皆楽をしてよい生活が出来るかの如く、大衆にうまいことを言って欺いているのは、このうまいことに惹きつけられて、彼等の宣伝に懸り、煽動に乗って、彼等の革命運動を支援し、彼等に政権を獲得させるよう、大衆を導くが為めの外、何ものでもないのである。大衆を戦い取るのでなく、大衆を欺き取るためである。

而もこの大衆を欺き取った上は、この大衆は彼等の踏み台となるだけである。彼等の獲得した政権の維持確保の為めに利用されるだけである。

欺き取られた大衆は、彼等の所謂「主義のために」犠牲にされてしまうのである。窮乏のどん底に投げ込まれようが、どうされようが、顧みられないのである。

加之(しかのみならず)、彼等は警察政治と軍隊の手によって、極端なる圧制の下に置かれ、不平一つ言うことも許されないのである。これは労農ロシアの我々に立派に実証したところによって明かである。

尚この共産党は、極端な専制的の党規を有し、而も秘密を厳守することを強制されているが故に、そこに極端なる少数者の専制が行われているのである。而してもしこの共産党が革命によって一度政権を獲得した暁には、その国家には大衆政治とは全然反対なる寡頭政治少数政治が行われる事、これまた労農ロシアの実証する所である。然らばこの共産党幹部なるものは、無産階級の名を潜し、無産階級独裁を假冒して、実は自分等の政権欲、支配欲を満足せんとする野心家の少数集団にすぎないということになるのである。即ち我が日本の共産党を結成せる徒輩は、日本の大衆を欺き取って、自己等の政権欲、支配欲を満足せんとする少数集団にすぎないのである。この少数集団が我等国民我等祖先幾十億のものが共に神聖視し、これが為めには身命をも抛ち来った日本国家の根本基礎たる君民一家の国体を破壊し、これを変革し、その手に政権を奪わんとするのである。

斯くの如きは、我等日本国民の堪え得る所でないのである。彼等は、我等国民の尊信措かざる万世一系の天皇の御地位を危からしめんとするのである。彼等は、我等にとって、不倶戴天の敵でなければならない。

要約

  • という文字がある。

    君主国体、民主国体を問わず、労農ロシア以外の現存の国家は、悉くブルジョワ階級支配のそれであるが故に、これ等の国家の根本組織(政治的、経済的、社会的組織)を変革して、無産階級支配の組織にせねばならぬ。という文字がある。これが、共産主義者の根本主張である。

  • これが、共産主義者の根本主張である。

    という文字がある。これが、共産主義者の根本主張である。共産主義者は、無産階級支配の政治組織を作ることを理想とし、常に「労働者農民の政府を作れ」と唱えて居る。

  • けれどもこの労働者農民の政府なるものは、労働者農民が全部これに参加して支配して居る政府であるかというに、事実に於て決してそうではない。

    共産主義者は、無産階級支配の政治組織を作ることを理想とし、常に「労働者農民の政府を作れ」と唱えて居る。けれどもこの労働者農民の政府なるものは、労働者農民が全部これに参加して支配して居る政府であるかというに、事実に於て決してそうではない。「無産階級独裁の政府」というも、決して無産階級全部が参加して独裁するのではない。

  • 若しこれ等の支配者に反対するものがあれば、反革命とか反幹部とかの罪名によって処罰されるのである。

    革命当初に於ては、レーニンがロマノフ皇帝に代って支配者となり、レーニン死後は、スターリンが支配者となったのである。若しこれ等の支配者に反対するものがあれば、反革命とか反幹部とかの罪名によって処罰されるのである。トロツキーは反幹部の罪名によって国外に逐放され、カーメネフ、ジノヴィエフ、レーニン夫人等の革職、最近ではブハーリン、ルイコフ等の免職が、この事実を明白に物語るものである。

  • これは、共産党なるものが自己の手に政権を奪取せんとする方便にすぎないのである。

    それに拘らず、何故共産主義は、労働者なり無産階級なりの救世主でもあるかの如く、騒ぎ立て囃し立て、鳴物入りの宣伝を行い各方面に種々の騒擾を起し、運動を起し、策動陰謀を試みつつあるのであるか。これは、共産党なるものが自己の手に政権を奪取せんとする方便にすぎないのである。この共産主義を実行さえすれば、立ちどころに誠に結構此上ない社会が出来、皆楽をしてよい生活が出来るかの如く、大衆にうまいことを言って欺いているのは、このうまいことに惹きつけられて、彼等の宣伝に懸り、煽動に乗って、彼等の革命運動を支援し、彼等に政権を獲得させるよう、大衆を導くが為めの外、何ものでもないのである。

  • 而もこの大衆を欺き取った上は、この大衆は彼等の踏み台となるだけである。

    大衆を戦い取るのでなく、大衆を欺き取るためである。而もこの大衆を欺き取った上は、この大衆は彼等の踏み台となるだけである。彼等の獲得した政権の維持確保の為めに利用されるだけである。

  • 即ち我が日本の共産党を結成せる徒輩は、日本の大衆を欺き取って、自己等の政権欲、支配欲を満足せんとする少数集団にすぎないのである。

    然らばこの共産党幹部なるものは、無産階級の名を潜し、無産階級独裁を假冒して、実は自分等の政権欲、支配欲を満足せんとする野心家の少数集団にすぎないということになるのである。即ち我が日本の共産党を結成せる徒輩は、日本の大衆を欺き取って、自己等の政権欲、支配欲を満足せんとする少数集団にすぎないのである。この少数集団が我等国民我等祖先幾十億のものが共に神聖視し、これが為めには身命をも抛ち来った日本国家の根本基礎たる君民一家の国体を破壊し、これを変革し、その手に政権を奪わんとするのである。

  • 彼等は、我等にとって、不倶戴天の敵でなければならない。

    彼等は、我等国民の尊信措かざる万世一系の天皇の御地位を危からしめんとするのである。彼等は、我等にとって、不倶戴天の敵でなければならない。

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